小惑星について

■Hestiaとは?

Hestia というのは、占星術で使われる小惑星群(セレス、パラス、ベスタ、ジュノー)のひとつ、ベスタの ギリシャ名です。最近では、占星術において、これら小惑星についての本もよく見かけるようになりました。和書では、魔女の家Booksから、アメリカ占星術教科書第6 巻『小惑星占星学』 が発行されましたし、個人的に洋書で、小惑星について学ばれている方も多いでしょう。

アメリカ占星術教科書第6巻『小惑星占星学』は、デメトラ・ジョージ Demetra Georgeの著書 『Asteroid Goddesses』 の翻訳の ようですが、これは4つの小惑星の性質が、その神話的側面から大変よく解説されています。特に、4つの小惑星に対応する 女神の絵は、なかなか把握しづらい小惑星の性質をよくあらわしていて、イメージがわきやすいです。

私が読んだ小惑星関係の本は、他に以下のようなものがあります。

・Asteroids in Synastry by Emma Belle Donath (AFA)1978
・Asteroids in the Birth Chart by Emma Belle Donath (AFA)1979
・Asteroids in Midpoints by Emma Belle Donath (AFA)1984

ミッドポイントというと、普通は The Combination of Stellar Influences by Reinhold Ebertin が有名ですが、 これは10天体とノースノード、アセンダント、MCのみですから、これに小惑星を加えるという方法論はおもしろい。
伝統的なトレミーの方法論の他に、Uranian Astrology の方法論にも触れられています。Uranian については私はほとんど知らないのですが、小惑星群 (outer belt of small planets, transneptunian)の発見と、midpoint の実践、円周の90度ごとの分割、またトレミー流とはかなり異なるルーラーシップの 法則があげられています。
●Uranian Astrolgy についてはこちら→ http://winz.co.nz/users/juno/

これらは、同じ著者の小惑星についての5冊の著書のうちの3つのようです。他の2つは、
・Asteroids in the U.S.A
・Approximate Positions of Asteroids, 1851-2050

です。

さて、なぜ私が Hestia などと名乗るかと申しますと、これは単純に、ネイタルチャートのアセンダント上に ベスタが乗っているからです。正確には、12ハウス側にありますが、オーブ1度以内にありアセンダントと合の場合、 1ハウス滞在のように読みます。

しかし、あえて12ハウス側にあることを読んでみてもおもしろいでしょう。もともと小惑星は、神秘学などでは「マルドゥク」という惑星がくだけて、4つの主要な小惑星になった、と言われます。そこから、「失われた古代の記憶」が封印されている、と言われます。 これは、アセンダントという「誕生の場」から、かろうじてわずかに過去の場にとどまっている(12ハウスは過去世の記憶?!)、その位置と、近いものを感じてしまいます。

■ 小惑星の女神たち

小惑星にその名を与えている女神たちの神話はこうです。

【セレス】
クロノスとレアの娘で、収穫の女神。堂々として、緑の衣装を身にまとったこの女神は、種をまき、畑に祝福を与えながら地上を闊歩して回った。穀物の実りがこの女神の関心事であり、彼女はたまねぎと畑の耕作と収穫をつかさどった。デメテルは恵みも深かったが気まぐれを起こすと、人間にとっては死活の問題になった。女神が幸せなときは豊作となり、女神が腹を立てると飢饉がやってきた。彼女は兄弟たちのことでもいろいろと心をくだいた。ゼウスがそのお気に入りで、彼はデメテルの可愛がっている花の王女ペルセポネの父親だった。彼女はいちばん上の兄、黄泉の国の王ハデスがペルセポネをさらい、強引に結婚してしまったことはどうしても許せなかった。一年のうちでペルセポネが下界に下り夫ハデスと暮らさなければならない時期には、デメテルは地上の植物に果実を実らせることを禁止した。彼女はまたいつも春になると意地悪くふくれあがって津波を起こし、デメテルの畑を水浸しにしてしまう弟のポセイドンとも仲が悪かったが、最後にたがいに仲直りしたということである。陸が海に接するところで生まれた彼らの子供たちは神馬アレイオンとニンフのデスポイナだった。デメテルはローマ神話のケレスにあたる。

【パラス(パラス・アテナ)】
ゼウスの娘で知恵の女神。アテナの母親は巨神族の盗めメティスだった。だがメティスについては、もし彼女が男の子を生んだ場合、その子供は自分の父親を殺すであろうという予言がなされていた。ゼウスは危ない目に会いたくないというわけで、メティスを丸ごと呑み込んでしまった。するとそくざにひどい頭痛にさいなまれたので、自分の頭を岩に打ちつけ始めた。ヘパイストスはゼウスを助けにやってきて、父親の頭を槌の一打で割った。ゼウスの頭蓋から背の高い、灰色の目の乙女が、槍を振りかざしながら飛び出してきた。このようにゼウスの頭から生まれてきたアテナは、当然知恵の女神、知的な活動のパトロンとなり、またアテナイの守護神となった。アテナイは彼女にちなんで名づけられ、そこでは彼女にかくべつの敬意が払われた。彼女は処女神パラス・アテナと呼ばれ、永遠に処女であった。彼女はいつも兜をかぶり、胸板をつけ、槍と盾とを手にした姿で描かれている。彼女は人々を賢くするためにたいへん熱心に尽力した。彼女は気に入った者に、鋤や紡ぎ車や帆などを創るすべを教えた。学者は啓示を求め、発明家は霊感を求め、裁判官は明晰と公平を求めて、彼女に祈った。軍隊の隊長たちも、戦いを前にして戦術をさらに磨こうとして彼女に祈った。オリーヴの木がアテナの聖木であり、ふくろうが聖鳥である。アテナはローマ神話ではミネルヴァに当たる。

【ベスタ】
かまどの女神。クロノスとレアは六人の神の子たちを生んだ。ヘスティア、デメテル、ヘラ、ポセイドン、ハデスそしてゼウスだったが、このうちいちばん上の娘ヘスティアは家族のほかの者たちとはたいへん違っていた。彼女はけっしてオリュンポスに渦巻いている陰謀には加わらず、いつも戦場を避け、神々と人間たちとの間で仲裁役を勤める努力をした。ヘスティアは優しく慈愛にあふれる女神で、家庭の団らんを促す役割を果たした。彼女自身は結婚もせず、自分の子供ももたなかったが、すべての孤児や迷い子たちの保護者となった。ヘスティアへの礼拝はたくさんの小さな灯火を捧げて行われ、彼女に敬意を払って、どんな小さなかまどの火も消すことは許されなかった。

【ジュノー】
クロノスとレアの娘。ゼウスの姉でもあって、神々の女王だった。ヘラの嫉妬はたいへん劇的な結果を招き、多くの神々や英雄たちの物語が、彼女の敵意を軸にして展開するので、ヘラ自身の物語はいくぶんあいまいなものとなっている。だがヘラには嫉妬以外にも多くのことがあった。彼女は美しく堂々たる女神であり、全世界から相手を選ぶことのできたゼウスが、みずから選んだ妻であり、ゼウスはいつも最後にはヘラのもとにもどった。ヘラの抱いた憎しみのなかでももっともよく知られ、もっとも多くの話を生み出したのは、ヘラクレスの母親アルクメネに対する憎しみだった。あらゆる人間の女のなかで、忍び足の王女、アルクメネはもっとも美しくまた賢く、ヘラは限りなくこの女性を憎んだ。ヘラのこの憎しみは、ゼウスとアルクメネの息子ヘラクレスに及んだ。ヘラクレスはその生涯を通じて、ヘラの毒を含んだ怒りに苦しめられた。彼が悪王エウリュステウスに隷属させられ、十二の難事の試練を受けねばならなかったことも、すべてヘラの仕組んだことであった。しかし同時にこれらの難事をやり遂げたことがヘラクレスの不滅の名声を築いたのであった。ヘラの復習はヘラクレスの栄光となった。じじつヘラクレスという名前は「ヘラの栄光」を意味する。それぞれの神は、ギリシアの信仰の大きな比喩体系のなかで独自の役割を果たしているが、ヘラの嫉妬深さはこの点たいへん意味深い。ゼウスの英雄の一族に対するヘラの敵意は、自然そのものの敵意を象徴する。そして英雄たちの苦悩の大きさと、その災を克服していく能力とが、彼らのヒロイズムを決定するのである。神々の女王ヘラ自身の方は、そのライバルに対して絶対の優位を保っていた。毎年春になると彼女はカナトスと呼ばれる泉で水浴をした。その水晶のように澄んだ水は年齢といら立ちとを洗い流した。そしてヘラはふたたび、かつてゼウスが雨雲とかっこうの姿でその愛を求めたそもそものなりそめのころと同じようにきれいで、どんな女神、ニンフ、人間もとうていかなわぬほどの美しい乙女となるのだった。するとゼウスはふたたび彼女の愛を求めた。ゼウスが二人の秘め事のために金色の雲を空に浮かべると、地上に咲く花の香りが、天上に送られ、あたり一面に立ちこめるのだった。ヘラはローマ神話のユノ(ジュノー)に当たる。

バーナード・エヴスリン「ギリシャ神話小事典」小林稔 訳
現代教養文庫 社会思想社 1979

まあ、こう見ると、Hestiaというのは、かなり地味な女神ですね。
占星術で、小惑星を人物イメージとして例えると、

 

セレス パラス ベスタ ジュノー
農民 女戦士 奴隷 正妻

 

というわけですから、ベスタはずいぶん地味ですね(^^;;; 小惑星研究は続きます…

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