Y.T.さんの月

Y.T.さんの月

1997.1月 Y.T.さんの月(1)

【写真1】

1997.1月 Y.T.さんの月(2)

【写真2】

1997.1月 Y.T.さんの月(3)

【写真3】

解像度の関係で、何の写真か分かりづらいものもあるようなので説明を加えま す。【写真1】は、洋風の美しい建物(お店?)の外観。クラシカルな電灯が、夜 の闇の中に、丸い明かりを放っています。上の写真では良く見えませんが、中央 には丸く外に反り出たバルコニーがあります。
【写真2】は、船の中から見た、窓の外の風景。画面の下の白い部分が外の風 景で、ビルがみえます。上半分は、船の天井で、ライトがオレンジ色の光を放っ ています。
【写真3】は、ビルの外壁です。同じく、左の写真では分かりづらいですが、 一番下の窓ガラスに、青い空にうっすらと浮かぶ白い雲が写っています。

さて、以上の3枚の月の写真は、Y.T.さんが2,30枚は撮った中から選んだ月の 写真ですが、Y.T.さんが月の写真を撮るのは、今回が初めてです。


今回は、まずこれらがなぜ“月の写真”なのか、Y.T.さん自身のコメントを紹 介します。

まず、一番始めに月らしい、と思ったのは、【写真3】の月。(実体は)ある のだが、身近でない、ガラス越しだったりとか、対象に行き着くまでにガラスな ど物体や空間があるのが良いな、と思った。
【写真1】は、店のライトをぼかして撮ったもの。光のにじむ感じ、ふわっと 、包むような感じがするが、自分と写真の対象物との距離も、この光のもやのよ うなものに包まれている感じがする。
【写真2】は、自分の目線としては、上のライトの明かりにあるのだが、その 向こうに、空や雲など風景が広かっているのが、自分では気に入っている。
全体的に、幻影、というか、ガラスに反射した青空、というのが月としてピン とくる。
月のイメージとしては、やはり“休まるもの”なのだが、その“休まる”とい うのも、ダイレクト(に与えられるもの)ではない。その意味で、月は身近なも ののはずだが、私にとっては、無条件に“身近”というわけではない。
焦点は、ガラスに映ったものとか、ガラスの向こうにあるものだが、それでも やはり、月としてはこのガラスが必要。ガラスという素材はとても好き。
また、月としては夜のイメージがある。
チャートの中では、あまり希望的な月ではないと思う。

じつは、月のイメージとして、撮りたい映像が始めにあった。
夜、暗い所で、カップから立ち上る湯気のふわっとした感じを、月として撮り たかったのだが、照明の関係でうまく撮れなかった。
また、夜の、人のいない電話BOXも撮りたかった。電話BOXなので、人がいるこ とが想像される風景だが、人は撮りたくない。人の入るものではあるが、今はい ない、夜の闇の中に光のさす電話BOX。


以上が、Y.T.さん自身のコメントです。
私が個人的に印象的だったのは、最後にあるように、月のイメージとして、始 めから撮りたい映像がかなり具体的に思い描かれていることです。このような話 からも、Y.T.さんの映像への親近性が分かりますね。

《研究会での解釈》私的解釈を含めて…

Y.T.さん自身のコメントでも分かるように、3枚の月の写真は、どれも具体的 な“物”ではなく、“物”の反射した姿、ガラスなど“物”との間に媒介物を介 した状態、また“光”やその、光の“広がっていく様子”など、“物”の変容の 過程、あるいははじめから、手で触れ得るような固形の“物”ではないようです 。

【写真1】や【写真3】は、光(のもや)や雲を撮ろうとしていることから、 “実体ではないもの”という印象が強い。
一方、【写真2】は、その色味からもそうですが、ボワーとした、というより は、画面の上と下との対比の方が印象的です。本人のコメントによると、Y.T.さ ん自身の焦点は、画面の下の風景にあるようですが、普通、空は画面の上方に、 暗い部分は画面の下方に配置されやすいだろうということから言うと、上方と下 方が逆転しているようで、目を引きます。

具体的に、Y.T.さんのネイタルチャートの月との関係を見てみましょう。
Y.T.さんの月は、天秤座4度で第8ハウスにあります。
アスペクトは、
・第12ハウス(Asn.と合)山羊座29度の金星と、第5ハウス蟹座1度のドラゴ ンヘッドとグランドトライン。
・第2ハウス牡羊座8度のセレスとオポジション。

月のある第8ハウスは、変容のプロセスを表す場所。対象に、深く入っていく ことによって自分自身が変質する。
Y.T.さんの場合、チャートルーラーの天王星と、さらに冥王星も、第8ハウス のカスプにあり、第8ハウスの意味はより強められると思われます。第8ハウス 自体が、もともとY.K.さんにとって重要な場であって、月という個人的に馴染む 性質が、第8ハウスへの抵抗をほとんどないものにしているのです。そしてまた 、この月はグランドトラインを形成していて、アスペクト的に“傷ついて”いま せん。

Y.T.さんは、コメントで「ガラスという素材はとても好き」と述べ、実際【写 真3】は、ガラスを撮った、という印象です。これはY.T.さんの月のサインが天 秤座のためでしょう。
天秤座は、他者の視線に自分がさらされる場所です。そして他者の自分へのイメージ に、自分自身が乗っかってしまう場所です。

ガラス、というのは、2つの意味で天秤座的です。
1つは、向こうにあるものを、透かして見せること。こちら側からみれば、向 こうから透かして見られること。
もう一つは、向こうにあるものを、反射してもう一度同じ側に写し出すこと。
天秤座の性質を、その本来の位置である第7ハウス的に考えると、このことは よく分かります。
第6ハウスまでは自己と外界は、はっきりと区別されていて、自己の内部は外 界からの視線を気にすることなく存在します。第6ハウスでは、その外部からの 視線に不安を感じてはいますが、実際に自分自身を視線にさらすことはありませ ん。それに対し第7ハウスはまるで、大通りに面したガラス張りのカフェに居る ような感じです。
そしてまた、ガラスの“反射”とは“鏡”の役割であって、第6ハウスまでの 自己の認識方法は、Des.を折り目として、反転されるとするなら、第7ハウスは 、第1ハウスという無自覚な自己存在の反転した状態、無意識の自己を鏡に写さ れた状態ともいうべき場所です。

サインの天秤座から、第7ハウス的に考えましたが、Y.T.さんの月は実際は第 8ハウスにあります。月の性質としては天秤座ですが、実際の行動や、その力の 発揮される場所としては第8ハウスとなります。

上に述べたように、Y.T.さんの第8ハウスには、
・乙女座の天王星(18度)と冥王星(17度)の合(カスプ近く)
・天秤座4度の月
・さらに、天王星と冥王星のミッドポイントに位置するパートオブフォーチュ ン(POF)

一方、対向の第2ハウスには
・セレス(月とオポジション)
・土星(魚座16度、カスプぴったり・天王星、冥王星とオポジション)
・キローン(天王星、冥王星とオポジション)
・ジュノー(土星と合)
があります。

月についての写真ですが、月は第8ハウスにあり、そのカスプとオーブ1度と2度に天王星と冥王星があるため、第8ハ ウスのことを考えるとき、この天王星と冥王星は無視できません。カスプ上とい うこともありますが、これら動きの遅い天体は、第8ハウス全体に、その影響を 与えます。月の性質も、天王星と冥王星の合と共に考えねばなりません。
上にも述べたように、第8ハウスは“変容”のハウスである上に、天王星や冥 王星という、最も影響が大きくまたそれ自体“変容”や“改革”を表す天体の色 が、ハウス全体にかかることで、第8ハウスの意味は強調され、どこまでも変わ ることに深くはまっていきます。それは第2ハウス的な安全な自己保存の欲求と は相容れなく、普通は、“馴染める”場所ではとてもないはずです。
ところがY.T.さんの場合は、個人的な天体である月と、さらに、POFという、 具体的に満足感を得られるポイントがそこにあるため、自己保存という面からは 、危機であるはずの第8ハウスが、はじめから、居心地のよい場所になっていま す。アスペクトも、グランドトラインを形成していて、居心地の良い状態を作っ ています。

Y.T.さんの写真の、光の拡散する様子や雲(の反射した姿)など、固い物質で ない、いくらでも形を変えていくもの、というのは、この第8ハウスの様子がよ く表れていると思います。

一方、この“居心地の良い変容”の第8ハウスに対し、本来なら、自己保存の ハウスであり、最も本人が馴染めるなずの第2ハウスは、反対に、そのカスプ上の土星によって、Y.T.さんにとって苦手な場所とな っています。第8ハウスでの変容の衝動に対して、“足を引っ張るもの”となっ ています。
そのような土星の影響は、写真の中に読み取れるでしょうか?

例えば、【写真2】は、普通画面では空などがあり明るいはずの上方が暗く重 たく、地面など思い印象であるはずの下方に外に開けた明るい空間があり、上方 と下方が逆転しているようだ、と上に述べました。
上方の位置では、ライトの明かりに焦点がある、とY.T.さん自身は言いますが 、第3者から見ると、やはり、この画面の半分以上ある暗さの重々しさは無視で きず、まるで下方にある風景(空)の上に蓋をしているようにさえ見えます。

この上方の重々しさが、第2ハウスにあって第8ハウスの足を引っ張っている 土星、だとは見えないでしょうか?
画面の9分割 で考えるなら、下方は、月や水星、金星など、個人的な領域です。そして、上 方は、土星から、天王星・海王星・冥王星の領域です。
象徴的に上方の暗さを土星の足かせ、と読める一方で、やはり、上方をその領 域とする土星の位置が暗くなっています。
単に月のある第8ハウスと土星のある第2ハウス、と考えるなら、個人的に馴 染み楽しめる第8ハウスが下方の開かれた空間、変容への衝動に待ったをかけて いる保守的な第2ハウスが上方の暗さ、のようです。

しかし、一方、天王星や冥王星も、画面では上方に位置します。天王星、冥王 星は、第8ハウスにあり、月と同じ明るい印象であるはずです。
さて、上方の暗さの中には、オレンジ色のかなり大きなライトの光があり、Y.T. さん本人の意識は、暗さよりもむしろ、このライトの光にあります。ライトの位 置は、9分割では、冥王星と土星の位置にあります。
第8ハウスと第2ハウスのアスペクトでは、冥王星と土星のオポジションがオ ーブ1度で最も近く、実は月と土星はアスペクトはありません。それゆえ、月の 位置の下方には、上方の暗さに遮られることなく、明るく開けた風景が広がり、 同じ第8ハウスでも土星とアスペクトする冥王星の位置は、ライトでマークされ つつも、暗い天井の中にある、というふうに見えます。

第8ハウスにある天体
・月(金星、ドラゴンヘッドとグランドトライン)
・天王星、冥王星(土星とオポジション、木星とスクエア)

というふうに、イージーアスペクトの多い月の部位である下方は明るく、ハー ドアスペクト(Tスクエア)となる天王星、冥王星など遠い天体の部位である上 方は暗い。
その上方の暗さの中でも、最もタイトなアスペクト(オーブ1度)をとる冥王 星、土星の位置には、同じライトがある(オーブ2度である天王星の位置にも、 うっすらとライトが写っている)。

暗さの中のオレンジ色の光、という、同じ物が冥王星と土星の位置にある、と いうことは、オポジションであるけれども(あるいは緊張したオポジションであ るから)、第8ハウスと第2ハウスのテーマは、このカスプ上の2天体の間で、 どちらがどちらでもない引っ張り合いの関係のようになっていて、一方が明るい 、一方は暗い、というような分裂した印象ではもはやなくなっている、という印 象が、写真からは見られます。
アスペクトを取る天体同士の(9分割の)位置には、同じ物を置きやすい、と いう解釈がありますが、ここでは、まさにそれが再現されています。

オポジションという、正反対の位置にあるのに同じ物を置く、というのは、ア スペクトの考え方が応用できそうです。
ネイタルチャートへのトランシット天体のアスペクトの解釈においても、アス ペクトの種類に関係なく、天体のみを考慮するということです。2つの天体の力 そのものだけを考えるのです。ちょっと話ははずれますが、例えば、タロットカ ードで逆位置を見ずに、全て正位置でカードの意味の組み合わせだけを考えるの と同じようなことでしょう。

つまり、2天体が、その緊張ゆえにお互いに強烈に影響を与え合っているので 、結果として、各々の性質が混ざり合っている。冥王星は土星のオポジションの バイアスがかかっているし、土星は冥王星のオポジションのバイアスがかかって いる、ということです。
もちろん、チャートによっては、どちらかが力が強く、その強い方の色に弱い 方が染まっている、ということはあるでしょう。

Y.T.さんの場合は、【写真2】では、この緊張関係が印象的ですが、他の2枚 の写真では、やはり第8ハウスや天秤座的テーマがうかがえて、天王星、冥王星 、月群の優勢が感じられます。

さて、それはなぜかというと、天王星、冥王星、土星とスクエアを形成してい る第5ハウス双子座の木星のためのようです。冥王星、土星のオポジションという、天体そのものもアス ペクトも非常に緊張したものを、第5ハウスでかつ双子座という、生き生きとし た場所にある、さらに緊張を解き放つ木星が、その緊張を“楽な方へ”持ってい こうとします。
ゆえに第2ハウスと第8ハウスの緊張では、Y.T.さんにとってより居心地の良 いはずである、第8ハウスの方が優勢となりがちです。
実際に撮った写真だけでなく、Y.T.さんが撮りたかったという映像の話からも 、それはあくまでも第8ハウス的なイメージのもので、また、始めから撮りたい 映像を思いうかべている、という、かなり意欲的な創造欲は、まさに第5ハウス 的な力でしょう。月は木星とはアスペクトを外れていますが、第5ハウスのドラ ゴンヘッドとトラインです。

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